厚生労働省の「我が国における高齢者の住まい等の状況について」によると、65歳以上の高齢夫婦世帯は、約8割が一戸建てに居住しています。
一方で、65歳以上の高齢単身世帯では約6割が共同住宅に居住しています。
家族と同居する高齢者は持ち家の割合が高いのですが、「ひとり暮らしの高齢者」の世帯は持ち家率が低くなり、3人に一人が賃貸に住んでいるようです。
高齢者にとって、持ち家に住むのと、賃貸住宅に住むのは、どちらが良いのでしょうか?
メリット・デメリットを比べてみました。
子供たちが全員出ていって、この家も広く感じるなあ。
たしか、ナビ男さんのところは、この春に下のお子さんも独立されたんですよね。
そうなんだよ。
子育てのために、郊外に広い家を買ったけど、もうみんな独立したから部屋を持て余しているんだよ。
この間階段で足を滑らせてからは、2階の部屋なんてほとんど行っていないな。
家の半分も使っていないのはもったいないですね。
実は賃貸マンションに住み替えることも考えているんだ。
少しでも新しいうちに売ったほうが、資産価値があるだろうからね。
そうですね。
駅近のマンションに引っ越せば、車や駐車場も手放せるので、固定資産税などの維持費も安くなると思いますよ。
・資産価値が高いうちに家を売れる
・駅近のマンションなら、車や駐車場も手放せる
・生活するのに便利な場所に引っ越せる
ここの家はスーパーや病院がちょっと遠いし、将来的には免許返納もするかもしれないからね。
徒歩圏内に必要なものが揃っている都心に引っ越すことも視野に入れているんだ。
老後に賃貸マンションに住み替えるメリットとして、立地を選べることは大きいですね。
それと、バリアフリーな設計が選べることも大きいですよ。
さきほど階段で足を滑らせたとおっしゃっていましたよね?
東京消防庁の「救急搬送データからみる高齢者の事故」によると、家庭内事故の9割以上を転倒と転落が占めています。
高齢になると骨がもろくなるため、家で転んで骨折して、寝たきりになるケースは少なくありません。
・高齢者になると、家の中の段差でつまづきやすくなる
・階段での転落事故も増える
・骨折から寝たきりになるケースも
うちは手すりがついていないから、階段が怖いなと感じることがあるよ。
階段ののぼりおりに不安を感じるようになったら、エレベーターのあるマンションに住み替えるのも一つの方法です。
オートロックならセキュリティ面でも安心です。
しかし、住み替えすると引っ越し費用や家賃が発生するだろう?
家を売ればまとまったお金はできると思うが、その後の収入源は年金しかないから、老後資金が足りるかどうか心配だ。
老後の蓄えもないことはないが、十分とは言えない金額だし……。
・老後の資金は足りるのか?
・年金だけで家賃を払い続けられるのか?
たしかに、年金生活に入ってから、高額な家賃を払い続けることは現実的ではありません。
年金生活者はどのくらいの家賃を目安にすればいいのかな?
老後一人で住むのか、夫婦で住むのか、都心なのか地方なのか、貯金があるのかによってもずいぶん異なりますが、目安として、「家賃は収入の3分の1程度まで」とされています。
家賃の目安は収入(年金含む)の3分の1程度まで
うちは私の年金14万に妻の年金7万円だから、夫婦で21万円の収入がある。
その1/3だから、家賃は7万円以内であればいいということかな。
その金額であれば貯金を切り崩さなくても、無理なく支払っていけると思います。
年を重ねるにつれて、入院や介護などの費用が必要になる可能性も高いので、家を売ったお金は万が一の備えにしておきましょう。
一つ、気がかりなことがあるんだ。
私は年金額がそこそこあるが、妻は専業主婦の期間が長ったから7万円程度しかないんだよ。
もし私が先に死んでしまったら、妻は家賃が払えないかもしれない。
引っ越すにしても、年寄りのひとり暮らしは嫌われるから心配だよ。
・妻の年金が夫より少ない
・夫に先立たれた後、妻は家賃が払えるのか?
たしかに、女性は男性より平均寿命が長いので、妻のほうが残されるケースが一般的ですね。
夫の死後、遺族厚生年金がもらえることもありますが、自営業者の妻はないこともあります。
自分の年金だけで暮らすのは大変な場合もあります。
夫の働き方によって違いがあるので、今のうちから確認したほうがいいですよ。
妻がひとりになって、住むところに困ったらかわいそうだ。
やっぱり持ち家に住み続けたほうがいいだろうか?
住み慣れた家にずっと住む安心感は大きいですよね。
でも、ひとりで大きな家を維持していくのは大変ですし、病気やケガで急に倒れたときのリスクもありますよ。
そりゃあ、見守りサービスがついていたり、バリアフリーの物件がいいんだが、家賃が高いだろう。
妻の年金だけでは払えないかもしれない。
そういう場合はどうすればいいんだい?
もし夫婦二人の生活資金に余裕があるなら、妻の年金の受取時期を繰り下げおくことをおすすめします。
・年金の受け取り時期は基本的に65歳から
・受け取り時期を先送りすればするほど、年金が増やせる!
年金の繰り下げ?
改正により、2022年4月からは75歳まで受取りを繰り下げることができるようになりました。
75歳まで受取りを先送りにすると、年金を最大84%増額させて受給することが可能になります。
夫の年金額がそれなりにある場合は、妻の年金受け取りはできるだけ先延ばしにすることをおすすめします。
75歳まで年金の受け取りを繰り下げると
最大で84%増額されるようになった
ということは、夫婦二人で生活している間は、私の年金やバイトの収入だけで生活費をまかなうようにして、妻の年金は受け取らずに繰り下げで増やしておくといいのかな?
ひとりになっても、年金額が多ければいろいろな選択肢を選べるだろう。
それがいいと思います。
やはり夫を亡くした後、妻が困窮するケースは多いですからね。
まだ元気で働けるうちや、夫の年金だけで足りる場合は、妻の年金は繰り下げておくと、ひとりになっても安心して生活できると思いますよ。
ここで今回のまとめです。
・賃貸住宅の家賃は、収入の1/3以内が目安
・終の住処は、どちらかがひとり暮らしになったときのことも見据える
・妻の年金は繰り下げて受給するのがおすすめ
老後の住まいは、夫婦二人のパターンと、単身世帯になったパターンのどちらもシミュレーションして決めたほうがいいんだね。
そうですね。
夫婦二人の生活だけではなく、どちらが残された場合にも、困ることがないように、ライフプランを考えることが大切ですね。
はい、今回の内容はいかがだったでしょうか?
持ち家に住み続けることも、賃貸マンションに住み替えることも、どちらもメリット・デメリットがあります。
夫婦二人の生活、どちらかが先立ったケース、両方を想定して、無理なく暮らせるプランを考えてくださいね。