定年退職後、年金と雇用保険の基本手当は、どちらか一方しかもらえないというイメージがありますよね。
ですが、実は年金と失業手当を両方もらうことのできる、お得な裏技があるのです。
それは退職日を○○にすることでした。
ナビ男さんはもうすぐ定年退職ですね。
退職日はいつにする予定ですか?
65歳の誕生日に退職して、そのあとまた仕事を探す予定です。
そうなんですか。
あと2日早く辞められたら、お得な裏技が使えるのにな……。
えっ?
どういうことですか?
実は、年金と雇用保険の基本手当のどちらももらえる方法があるんです。
年金と雇用保険の基本手当のどちらももらえる裏技がある!
そうなのかい?
65歳をすぎると、雇用保険の基本手当は出なくなると聞いたんだが……。
ええ、そのとおりです。
雇用保険は、65歳にボーダーラインがあります。
失業したとき64歳以下であれば基本手当、65歳以上であれば高年齢求職者給付金が支給されます。
それって、名前が変わるだけなのかい?
一方、高年齢求職者給付金は、最大で50日しかもらえません。
基本手当に比べると最大で100日分も少なくなってしまうのです。
うーん。
日数だけではピンと来ないな……。
金額で言うとどれくらいになるんだい?
私は64歳だから、もらえる基本手当日額は、多くても1日7,186円ということか。
そうです。
この基本手当日額の100日分ですから、718,600円になります。
これはけっこう大きな金額ではないでしょうか?
辞めるタイミングが一日違うだけで、70万円もらい損ねてしまうのは、ちょっともったいないな。
そうすると退職日を前倒しにして、64歳のうちに辞めたほうが得だということだよね。
雇用保険だけを考えるとそうなんです。
ただ、65歳未満で基本手当を受け取ると、特別支給の老齢厚生年金の支給が止まってしまうことには、注意が必要です。
特別支給の老齢厚生年金とは何だい?
ふつうの年金とは違うのかな?
ちょっと違いますね。
いまは、年金がもらえる年齢は65歳ですけど、昭和60年に改正されるまでは、60歳から年金がもらえていました。
いままで60歳で年金をもらっていたのに、いきなり「65歳まで年金はもらえませんよ」と言われたら困りますよね。
そうだなぁ。
老後の計画がくるって、すごく困ってしまうだろうね。
ですから、受給開始年齢を段階的に引き上げるための経過措置として、「特別支給の老齢厚生年金」という制度が設けられたのです。
この表を見ていただけますか。
引用:MONEY PLUS
https://media.moneyforward.com/articles/6150
こんなふうに、生年月日によって、60~64歳までの間にもらえる年金が、特別支給の老齢厚生年金です。
なるほど。私が今受給しているのは、「特別支給の老齢厚生年金」なのか。
これは基本手当をもらうと全額止まってしまうのかい?
はい。
基本手当をもらった日が一日でもあると、その月の特別支給の老齢厚生年金は全額ストップしてしまいます。
支給停止された年金は、後からもらうことはできないのだろうか?
ええ、後からもらうことはできません。
これはかなりもったいないですよね。
うーん。
64歳で辞めたら、失業保険はもらえるけど、年金が止まる。
65歳で辞めたら、年金はもらえるけど基本手当が出ないんだね。
結局、どちらが得なんだろう?
実は、どちらももらえる裏技があります。
それが、64歳11カ月で退職して、65歳になってからハローワークに行くことです。
・64歳11カ月で退職する
・65歳になってからハローワークに行く
どうしてそうなるんだい?
雇用保険は、離職したタイミングで64歳であればいいのです。
ですから64歳11カ月で辞めます。
これで最大150日分の基本手当はもらえますね。
老齢厚生年金ももらえるのかい?
ええ。
65歳の誕生日を迎えてからハローワークに行くことで特別支給の老齢厚生年金も無駄なくもらうことができます。
ということは、誕生日の前日までに辞めればいいのかな。
いえいえ、法律の世界の考え方では、誕生日の前日にはもう65歳になっているとみなされます。
ですから、誕生日の前日では遅いのです。
必ず、誕生日の2日前までに退職するようにしてください。
なるほど。
そこは注意が必要だね。
1つ気になることがあるんだが、65歳になった後もずっと基本手当と年金がもらえるんだろうか?
はい。65歳になってからは、本来支給の老齢年金がもらえます。
この年金は、元々基本手当との調整がないので、どちらも支給されます。
なるほど。
どうせ辞めるなら、64歳11カ月で辞めたほうがお得ということだね。
おっしゃるとおりです。ただ、注意点があります。
雇用保険の基本手当を受けるには、基本的に仕事を探しているのに就職できないという「失業」の状態であることが前提になります。
ですから、ハローワークに行って、求職活動をしたり、28日おきに失業の認定を受けたりする必要があります。
https://www.shiruporuto.jp/public/senior/pension/kakehashi/kakehashi203.html
そうか……。
定年までがんばって働いたから、少し休もうと思っていたんだ。
いきなり転職活動をするのはちょっとしんどいな……。
大丈夫ですよ。
定年により離職した方は、最大で1年間受給期間の延長を申請することができます。
離職の日の翌日から2か月以内にハローワークに行って「受給期間延長」の手続きを行ってくださいね。
・退職日の翌日から2カ月以内に受給期間延長申請書を提出する
なるほど。
もらえる権利を確定させておいて、改めて再就職をするときに、基本手当を受け取れば良いんだね。
そういうことです。
ここで、今回のまとめです。
・辞めるなら64歳11カ月がお得!
・65歳になる2日前までに退職し、誕生日を迎えてからハローワークに行きましょう。
会社によっては、定年の直前に辞めると退職金を減らされたり、自己都合退職扱いにされたりすることがあるので、事前にしっかり会社の規定を確認してくださいね。
なるほど。
ペナルティなしで退職日を調整できないか、人事に行って相談してくるよ。
ぜひそうしてください。
はい、今回の内容はいかがだったでしょうか?
退職日のタイミングが1日違うだけで、得られるメリットは大きくなるので、ぜひご検討ください。