高年齢求職者給付金とは、65歳以上の方が失業したときにもらえる雇用保険の給付金です。
基本手当とは違い、一時金として給付され、年金とも同時にもらうことができます。
いままでは一度しかもらえませんでしたが、2017年1月の雇用保険法改正によって、雇用保険の被保険者の年齢制限がなくなったことで、条件さえ満たせば何度でももらえるようになりました。
パートでもアルバイトでも、雇用保険に加入さえしていれば、失業しても高年齢求職者給付金がもらえる可能性があります。
その詳しい要件について確認していきましょう。
ナビ男さん、定年退職後、コンビニでバイトしてるって聞いたけど、調子はどうですか?
いや~、しばらく働いていたのですが、夜勤が体にこたえて、もうやめちゃったんですよ。
今はまた求職中です。
そうなんですか。高年齢求職者給付金はもらいましたか?
え、高年齢求職者給付金って、何でしたっけ?
65歳以上の雇用保険の被保険者が失業したときにもらえるお金ですよ。
65歳未満の方がもらえる基本手当とは違って、一時金でもらえるのが特徴です。
あ~、それなら、数年前にもらいました。
あれってもらえるのは1回だけですよね?
ナビ男さん、高年齢求職者給付金は、何度でももらえますよ。
たしかに昔は1回だけでしたけど、2017年に法改正があって、条件を満たせば何度も受け取れるようになったんです。
えっ、そうなんですか?
でも受け取るためには、何か条件があったような……。
何でしたっけ?
条件の1つ目は、失業状態にあることです。
雇用保険でいう失業とは、「就職したい」という意思があって、積極的に求職活動をしていることです。
家事に専念したり、しばらく休養したりするときは失業の状態とは言えません。
①
失業していること
私は今、次の仕事先を探しているから、失業の状態にあるということだね。
そうですね。
条件の2つ目は、雇用保険に入っていることです。
雇用保険……。
入ってたかな?
1週間に20時間以上働いている人が、31日以上雇用される見込みがある場合、雇用保険の被保険者になります。
②
雇用保険に入っていること
(雇用保険の加入の対象者)
・1週あたりの所定労働時間が20時間以上
・31日以上の雇用期間が見込める場合
私は1日7時間のパートを、週3~4日していたから、この条件を満たしそうだね。
週の所定労働時間が20時間以上になるので、きっと雇用保険に加入していると思います。
もし加入資格を満たしているのに、雇用保険の手続きをしていないときは、会社にお願いすることで、過去2年分までさかのぼって加入することができます。
これは、パートやアルバイトでもいいんだよね?
はい!
雇用保険にさえ入っていれば、雇用形態は関係ありません。
実は、1つの会社であまり長く働かずに、転職しているんだ。
前職を辞めたときに、1年以上間隔は空いていますか?
いや、せいぜい2~3カ月間くらいだよ。
そのときに雇用保険の給付を受けていないのであれば、被保険者期間は通算できますよ。
引用:社会保険・労働保険手続代行センター
https://srai.jp/shakaihoken/archives/297
1年以内に、通算して6カ月以上の被保険者期間があれば、高年齢求職者給付金は受けることができます。
このときの被保険者期間は「1カ月につき11日以上働いている月」を数えます。
・被保険者期間が、離職前1年以内に、通算して6カ月以上あること
・1カ月につき11日以上働いていること
バイト先が何回か変わったとしても、通算して半年以上働けばいいんだね。
私は高年齢求職者給付金をいくらくらいもらえるのか、計算してもらえるかな?
高年齢求職者給付金は、やめる前の給料をベースに一日分の金額が決まります。
これを「基本手当日額相当額」と言います。
ナビ男さんの離職前6カ月間の給料はどのくらいでしたか?
ふむ……。
平均すると15万円くらいだったかな。
高年齢求職者給付金は被保険者期間が1年以上だと50日分、1年未満だと30日分がもらえます。
ナビ男さんの被保険者期間はどれくらいですか。
1年以上はあるだろうね。
では、かんたんに計算してみましょう。
・退職前の給料が月15万円の場合
・賃金日額は5000円
・給付率は80%
・賃金日額5000円×給付率80%=基本手当日額は4000円
・被保険者期間が1年以上の場合4000円×50日分=20万円
退職前に月15万円の給与をもらっていた場合、賃金日額は5000円です。
給付率は80%ですから、賃金日額5000円×給付率80%で、基本手当日額相当額は4000円になります。
被保険者期間が1年以上あれば、4000円×50日分で、20万円ということになりますね。
それは臨時収入みたいでうれしいなぁ。
年金といっしょにもらえるかい?
はい。
高年齢求職者給付金は、一括で振り込まれて、年金との併給調整もありません。
しかも所得とはみなされないため、確定申告の必要もないのです。
あっ、でも受け取るための期間が決まっていたよね。
辞めてからいつまでに手続きをしたらいいんだっけ?
高年齢求職者給付金を受けることができる期間は、離職の日の翌日から1年間です。
再就職を希望される方はすぐにハローワークで手続きしてくださいね。
https://jsite.mhlw.go.jp/hokkaido-hellowork/list/sapporo/kyusyokusya/hokenzyukyu/kourei/4.html
早速ハローワークに行ってこよう!
ナビ男さん、浮かない顔してどうしましたか?
いやぁ、ハローワークに行ってきたんだけど、私は前職のコンビニを自己都合でやめてしまったので、高年齢求職者給付金は2カ月間もらえないって言われたんだよ……。
なるほど、自己都合で仕事をやめると、しばらくお金がもらえない「給付制限期間」がありますからね。それは仕方ないですね。
給付制限期間は2~3カ月かかることがある
https://www.postal-club.com/files/user/images/free-content/fin-plan/cht-fin-plan-090805-03.gif
どうしようかなぁ。
恥ずかしい話だが、しばらく収入がないから、ちょっと家計が厳しいんだよ。今バイトをすると、高年齢求職者給付金はもらえなくなるのかい?
いえいえ、そんなことはないですよ。
自己都合で退職した人は、高年齢求職者給付金がもらえるまでに時間がかかるので、ある程度働くことが認められています。
でも絶対に働いてはいけない日もあるんですよ。
それはいつだろう?
待期期間の7日間です。
少しでも収入を得た場合、待期期間が延長されてしまいますから要注意です。
失業の認定日当日も働いてはいけません。
それ以外の日ならアルバイトしても大丈夫です。
ただし、雇用保険の加入条件を満たすほど働くと、再就職したと判断されて受給できなくなります。
なるほど……。
日雇いのバイトでもして食いつなごうかな。
高年齢求職者給付金は、もらってすぐに就職しても問題はないのかい?
はい。
認定日の翌日に就職したとしても問題ありません。
この繰り返しで、受給資格を満たすたびに、高年齢求職者給付金をもらうことができますよ。
ここで、今回のまとめです。
・高年齢求職者給付金は、要件を満たせば何度でももらえます。
・要件は、離職前1年以内に、通算して6カ月以上の被保険者期間があること
・パートでもアルバイトでも大丈夫です。
はい、今回の内容はいかがだったでしょうか?
高年齢求職者給付金は65歳を超えて働く人も多くなった今だからこそ、ぜひ知ってもらいたい制度です。