人生100年時代と言われるほど寿命が長くなっている現代。
自分自身やパートナー、親の介護は誰にとっても身近な問題です。
介護保険制度とは、介護が必要になった高齢者を社会全体で支えるしくみです。
介護保険で受けられるサービスや、申請方法などをわかりやすく解説します。
ねえ、ちょっと聞きたいんだけど……。
はい、なんですか?
最近、うちの母の物忘れが激しくなっちゃって。
この間は、スーパーに買い物に行ったのに、途中で何が目的だったか忘れて帰ってきちゃったのよ。
物の置き場所もすぐにわからなくなるから、心配になっちゃって……。
そうなんですか。
お医者さんには行きましたか?
行ったんだけど「たぶん認知症ですね」って言われちゃったわ。
足腰も弱ってきてるし、一人にさせるのは心配なの。
私もつきっきりではいられないから、誰かにお手伝いを頼もうと思うんだけど。
そういうときにも介護保険って使えるのかしら?
はい、もちろん大丈夫です。
基本的な日常生活が一人でできる方であっても、買い物や金銭管理などに不安がある場合は、一部見守りや手助けが必要ですよね。
そういう介護の初期の段階から介護保険は利用できるんですよ。
例えば、日中に車の送迎つきで施設に通って、運動や入浴してきたり、リハビリを受けたりすることもできるんですよ。
介護ベッドを借りたり、住宅をバリアフリーに改修したりすることも、介護保険の対象になります。
それはいいわねえ。
自宅にもヘルパーさんを呼べるのかしら?
ええ。
ホームヘルパーさんを自宅に呼んで、料理や洗濯などのサポートをしてもらったり、訪問看護をしてもらうこともできますよ。
介護保険って誰でも受けられるのよね?
そうです。
日本では40歳になると、誰もが「介護保険」への加入と保険料の支払いが義務付けられます。
介護保険のサービスが受けられる人は、年齢別に2種類に区分されます。
・第1号被保険者:65歳以上で、日常生活で介護や支援が必要になった方
・第2号被保険者:40歳以上65歳未満で、老化が原因とされる特定疾病により介護や支援が必要になった方
特定疾病:がん、パーキンソン病関連疾患、認知症、脳血管疾患など
65歳以上で介護が必要な状態であれば、理由を問わず対象となります。
また、40歳以上65歳未満でも、「老化」が原因とされる特定疾病であれば、介護保険のサービスを受けることができます。
それなら、うちの母も対象になりそうだわ。
どうしたらサービスを受けることができるの?
では介護保険を利用するための4つのステップをご紹介します。
介護認定の申請
お住まいの市区町村の介護保険の窓口や、地域包括支援センター、居宅介護支援事業所などに行って申請を行う
ステップ1は介護認定の申請です。
介護保険を受けたい人が住んでいる市区町村の窓口や地域包括支援センターなどに行って、申請手続きをすることが必要です。
家族が代理で行ってもいいの?
もちろん家族が代わりに申請することもできますよ。
65歳以上の場合は介護保険被保険者証、65歳未満の場合は、健康保険証をお持ちくださいね。
認定調査認定調査員による「認定調査」を受ける
ステップ2は認定調査です。
申請してから約2週間で、認定調査員による訪問調査が行われます。
調査って、何をするの?
申請した方がどの程度自立して生活できるかどうか、ご本人や家族から聞き取り調査を行うのです。
介護の必要性の程度によって、要支援や要介護の区分が決まります。
ご本人の普段通りの様子を見てもらって、ナビ子さんが不安に思っていることも伝えてください。
その結果と、主治医の意見書をもとに、要介護度や要支援度が決まります。
その、要介護度って何?
介護認定には7つの段階があります。
その区分により、受けられるサービスや支援限度額が異なります。
引用:ニチイの介護サイト
https://www.nichii-kaigo.jp/basic/money/
例えば、一番軽い「要支援1」は、基本的な生活は送れますが、入浴やそうじなど、なんらかに介助が必要な方です。
一番重い「要介護5」になると、寝たきりで意志の疎通が難しいなど、日常生活全般にサポートが必要になります。
うちの母は要支援1か2かしらねえ。
介護の必要度の判定
続いて、ステップ3。
申請した日から原則30日以内に、介護認定の通知が自宅に送られます。
介護認定はおおまかに、「非該当(自立)」「要支援」「要介護」の3つに分けられます。
「非該当」であれば介護保険のサービスを受けることはできません。
ただし、予防のためのサービスを受けることはできますので、お住まいの市区町村にお問い合わせください。
うちの母は、日常生活は送れるから、たぶん「要支援」だと思うわ。
「要支援」であれば、介護予防訪問や、ショートステイなどの「在宅サービス」を受けられます。
万が一症状が進んで、「要介護」状態に認定されると、在宅サービスに加え、「介護老人保健施設」や「介護療養型医療施設」などの施設サービスを利用することもできます。
利用限度額は区分によって決まっていて、この金額を超えた分は全額自己負担となります。
なるほど。
この金額の範囲内で介護サービスを選べばいいのね。
ケアプランの作成・サービスの利用
ステップ4は、ケアプランの作成です。
介護認定されたら、ケアマネジャーにケアプランの作成を依頼します。
サービスの内容や料金、利用限度額などを考慮して、担当ケアマネージャーが予防や介護のためのプランを作ってくれますよ。
専門家が母にあったプランを作ってくれるのね。ありがたいわ。
その上、ケアプランの作成費用は全額が介護保険の対象なので自己負担はありません。
ケアプランができたら、いよいよ介護サービスの利用ができます。
利用料の支払いは、原則としてサービスを使った金額の1割です。
ただし、食費や、滞在費などの実費が必要な場合がありますのでご確認ください。
ありがとう。介護保険を使うための流れがわかったわ。
それはよかったです。
介護の負担を少しでも軽くするために、上手にご活用くださいね。
ここで今回のまとめです。
・介護保険を受けるときは、まず市区町村に申請書を提出する
・その後、認定調査を受けて要介護認定が行われる
・介護度によって、受けられるサービスや支給限度額は異なる
うちの母は去年まではすっごく元気だったのよ。
介護なんて、まだまだ先のことだと思っていたからびっくりしちゃったわ。
そうですよね。
できれば、ご両親が元気なうちから、きょうだいの間で、誰が介護するのかということや、お金の面について話し合っておくといいですよ。
急に倒れてしまったりすると、とても焦りますからね。
普段からの準備が大切です。
はい、今回の内容はいかがだったでしょうか?
介護というと寝たきりのイメージがあるかもしれませんが、足腰が弱ってきた、筋力が衰えてきたというときでも、誰かの手助けは必要なもの。
日常生活は送れているけど、少しだけ見守ってほしい、サポートしてほしいというときには、ぜひ介護保険をご利用ください。